隠し部屋

感情を抱えていたら詩になった

月の祈り

月明かりの下で踊り子と
終りの音が鳴らされている
はち切れる歪みがついに
召される日がやってきた

言葉をつかえるけど
あなたには話さない
甘い匂いに咽せて
呼吸も苦しいのに

存在はいつも欠けていて
森の約束をわたしは守れない
示唆してくれたものたちに
心は震えたけれど
沈黙と冷たさを憶えたから
前のようには歌えない

解読が求められるセカイで
俯いたら呆れられる
真実との矛盾を突きつけて
心は錆びるか崩れ堕ちるか

一つだけの抜け道を
破滅とわかっても選びとる
わたしのための町は
何処を探してもない

創れない物語に操られる
硝子の容れ物は割れる
黒い水に呑みこまれ
何かを壊してしまうから
わたしのための結末を
不揃いに並べてこの家にいる

悲しみも憎しみも
力に変えられないから
その存在だけを
移して無に帰っていく

また産まれる時まで

月が目映く
世界を見下ろすように
祈りを静かな夜に捧げて
少しだけおやすみ