隠し部屋

感情を抱えていたら詩になった

嘘つき

もう二度と 奪われたくない

心惹かれてたんだ 本当さ
傷つけるつもりなんてない
アイシテルと 言えないけど
大切に想っている

どうして泣くの
今日も一人で
夢を見てるんだね
此処においでよ

犇めく夜空の流れ星は
この天井の向こうで
明日には掴めるはず
甘い怠い 詠み人の語り

真っすぐに君を 好きだった
ほら嘘なんてついてない
出来ない約束 しないやさしさ
何もかも勘違い

どうして今も
憎しみ抱く
傷つけてごめんね
きっと待つから

鉛のような記憶が映る
このベッドの端っこで
昨日は忘れられるはず
甘い狡い 恋人たちの遊び

もう 奪われたくない

魔法のコトバ 化けの皮
剥がして笑って蹴りつける
愛を真実と呼ぶのなら
傷はもっと 深くて遠い
焼きつけられた印

どうして行くの
今日は二人で
語り合ってみよう
此処にいるから

告げられず訪れる雷雲
嘘つきの正体を破って
明日なんてもう無い
死んで死んで 詠み人の視線

奪われたく ない

熱をもった肌

色が移り変わる糸屑
細胞そして羽模様
閉じるしかない瞼の
背後で波を乱す

涙を浮かす夜も更けて
数えたやさしさの粒
天井の模様だけを
少し憶えている

重みは愛か暴力か
みんなは好きに語って
腫れ上がっている頬が
心を腐らせていく

鎖は自ら嵌めるもの
被害者なんて言えない
ただひたすらに怯えてる
注ぎ込まれた傷に

言えてすっきりした
あの人の声
震えて逃げていった
愛しさの、

始まりは終わり。

解っている複雑な糸
すべて絡み合って
此処に立っている
だからといって、

赦せない。

残虐なことを平気で
何処かでいつも
笑わないで
もう見ないで
夢に疲れたから
憑かれているだけと
知っているから
離れて

欲望に曝されるの
耐えられない

アイシテルと愛は
すれ違っている

何も重ねられない

熱をもった肌。

返り血

死の追いかけっこ
ほら食い潰し
返り血に染まるまで

耐えてごらん
その小さな躰を
無数の針で傷つけて

切れない手首
縋りつく衝動
狂いだすまで
あと何時間何分?

そんなことはない
弱々しく吐いた
言葉は虚しくも
空気に消えていく

守りたいものを
指折り数えて
箱舟に乗せよう
波に逆らって

知らなくていい
真っ白でいい
暗闇はもういい
白夜は明ける

突き破りそうな憎悪を
尖った感情を
鎖で巻く

逢いに行けるなんて
大嘘つきだね

とっくの昔に
綴じられたの

聖書も正義も
八つ裂きにして
灰になるまで燃やしたい

造られた愛には
心をゆるせない

抱くためだけに
存在していたいのに
復讐としての死を
夢見てしまう

孤独に立つと
殴りつける
わたしが見える

何もできないほど
無力ではないの

損なわれた想いは
拠り所を求めて

怯えながら彷徨い
幻想の夜に帰る

私は私ではないし
貴方はあなたにならない

要らない
要らない

要らないのよ

神様

寒くはないはずなんだ
神様がそうやって言ったから
愛に包まれて育ったの
寒くはないはずなんだ

鳥肌が何故かたっている
いつもわからない話ばかり
誰かの心に染まってみたら
鳥肌が何故かたっている

何となく少し怖いんだ
やさしい人の奥に光るもの
救いと呼ばれた言葉でも
何となく少し怖いんだ

想像の中で燃やしている
本当に存在して欲しくない
あっという間に消えるから
想像の中で燃やしている

目を背けたくなる悪いんだ
嘘を見つけたら怒られちゃう
物語の断片に都合よく嵌る
目を背けたくなる悪いんだ

偉い人はキライ
正義は傷をつける
愛は手錠みたい
神様は嘘だらけ

どうしたって寒いんだ
悪魔が耳もとに巣食ったの
夜に騙されていつまでも
どうしたって寒いんだ

月の祈り

月明かりの下で踊り子と
終りの音が鳴らされている
はち切れる歪みがついに
召される日がやってきた

言葉をつかえるけど
あなたには話さない
甘い匂いに咽せて
呼吸も苦しいのに

存在はいつも欠けていて
森の約束をわたしは守れない
示唆してくれたものたちに
心は震えたけれど
沈黙と冷たさを憶えたから
前のようには歌えない

解読が求められるセカイで
俯いたら呆れられる
真実との矛盾を突きつけて
心は錆びるか崩れ堕ちるか

一つだけの抜け道を
破滅とわかっても選びとる
わたしのための町は
何処を探してもない

創れない物語に操られる
硝子の容れ物は割れる
黒い水に呑みこまれ
何かを壊してしまうから
わたしのための結末を
不揃いに並べてこの家にいる

悲しみも憎しみも
力に変えられないから
その存在だけを
移して無に帰っていく

また産まれる時まで

月が目映く
世界を見下ろすように
祈りを静かな夜に捧げて
少しだけおやすみ

午睡と空想

眠りに凭れかかる
日曜の昼下がり
力なく笑うだけ
侮蔑される午睡

遠くの少女の口もとが
小さく揺れている
歩くための脚が
千切れそう

麻痺させている心
知らないに押しやる
逃げか災いか
決めても変わらない

慣れた部屋に座る
空気から音がして
想像が駆け巡る
要らないものばかり

寝起きには焦り
窓からは夕焼け
繰り返しの中で
すり減っていく

今さら見つけても
あなたは無知すぎる
何が地獄か
わからずは救えない

転がした妄想
傷のない手首
現実は冷たくて
嘘ばかり捗る

過去が迎えに来る
閉じこめた半身
わたしのせいじゃない
罰を呑みこんで

死を祈る
他にやりようもない
死に近づいた
共有はない

共鳴なんて
いらない

置いていかれた
イカれた
出来損ないに
未練はつかない

敵だけは見つけて
恨みを暴発させず
滅ぶ命だから
ゆるして

好きになれなかった

ゆるして。