隠し部屋

感情を抱えていたら詩になった

邪魔

ねえバカにしてよ ちゃんと
捕まえることも出来ないなら
そこに一人で立っていてよ
歩く時の邪魔だから

そう言ってないよね きちんと
重心をかけることも出来ないなら
黙って一人で遊んでてよ
声をかけられても困るから

黙って一人で遊んでてよ
大好きな自分と
永遠に漂ってなよ
アイシテルとか云わないでね?

ねえバカにしてる 本当に
何が起こったのかも見ないなら
ずっと一人で喋ってろよ
生きるために邪魔だから

波紋

雫が落ちて 波紋が広がる
泪が堕ちて 憎悪と変わる
始まりは愛と呼んでいたけど
空っぽを平気で語るから

賛美の声に 恨みが燃える
氷となって 胸に広がる
初めては心を揺さぶったけど
狂っていくのは容易いから

今日も歓ぶ 世界の果ては
渦を巡って 秘密を告げる
殻を破る前に知らなければ
永遠に戻らないものもあると

示唆されることもなく
風を浴びて眠る
そうやって形が
歪められていく

誰もいない場所で

雫が涸れて 波紋は揺れる
やさしい声で 憎悪を撫でる
始まりは手の中にいたけれど
空っぽに耐えられないから

感情を抱えられずに
動けなくなっていく

向かい合う 影と巡り会う
半身の記憶が混ざっていく

光刺す 影に人がいる
離れてしまえばよかったのに

仮初めの誓い 無邪気な声で
未来を見たのだろう
そうやってつくられた

惹かれ合う 筋書きのよう
どちらかはきっと壊れていく

釘をさす 今も向かい合う
そろそろ散歩に行かないと

ダメ だって

お伽話

外で何かが鳴いているよ
家で誰かが泣いているよ
あの時のお母さんは元気かな
知らない世界のお伽話

不思議な水音が聴こえるよ
あの人の身体からかな
不自然な水音が聴こえるよ
どうしようもない世界

突き落としたのは貴方だよ
本当は私なのかな
ゆっくりと重みを失くして
安息がやってくるね

外で誰かが泣いているよ

助けてって言っているかも
喰べたいって泣いているかも
どちらも間に合わないよ
椅子はもう足りているから

家で何かが鳴いているよ

閉じこめたあの子は
元気にしている?
もう忘れちゃったかな
人間ってそういうものだね

爛れた肌を隠しもせずに
泣き叫んでいたあの子は
まだ息をしている?

空は見ているからね

おやすみ 瞼を開ける日まで
おやすみ ずっと待っているよ

暴力の指

遍く世界に存在している
首を絞めようとする指
見えない手でわたしたちを
縛りつけようとする者

背後に立っていても
声を出したらダメ
凛とした視線を遠くへ
弱さもすべて込みで

髪を切りましょう服も裂いて
血飛沫が見えたって気にしない
ねじ伏せられるわけにいかないわ
ここまで自分で辿り着いたのだもの

数多の町に存在している
行く手を阻もうとする指
ちがう言葉でわたしたちを
貶めようとする者

悪意がないと云っても
耳を貸したらダメ
凛とした愛は遠くの
守るべき人に捧げて

蹴りあげましょう踏み躙る足を
忘れたって嘘に騙されたりしない
死んで思い知らせてもいいけれど
哀れみに浸られたら殺したくなるもの

わたしたちは

求めましょう世界中に嘲られても
沈黙で絡めとられるわけにいかない
にっこり微笑んで心で舌出すの
まだまだ生きていれるはずだもの

亡きものへ弔いを捧ぐために
わたしたちは紐を切りましょう

檻の中

平気なフリをしてずっと笑ってたの
嘘も続ければ真実になるかもなんて
お行儀のいい獲物として生きたの
朝に餌になるかもしれないから

檻に入れられる人を眺めていた
自ら閉じ込められる人も眺めていた
声色はやさしいのだけど何かおかしいの
夜になってもあまりに静かだから

目隠しをされて此処に来ていた
視えないルールを呑み込む他にはなくて
愛せないものを愛そうとしたの
観ている人を騙そうとしていたら

知らないうちに手首を切られていて
喰うものたちと屍の山を見た
解放など在りえないと云われた
言葉にならない方が結末は重いの

誰かがこっそりと耳打ちをして
外の世界を描いてくれたなら救われた
愛憎が注ぎ込まれた躰は操れない
今さら語り合っても苦しいだけ

自由を夢見てもこの手は汚れていて
痛みすらわたしのものにならないよ
永久に囚われてしまう前に
泪が尖って壁を壊したらいい

臆病なまま鎖を離さなければ
もうすぐ破滅の火がやってくるよ

よろめいた小鳥

見つけたよ可愛い小鳥 翼は折れて
羽ばたくな可愛い小鳥 血が滴る

陽の光に少しだけ揺らめく
茶色の羽根は幻を行き来する
餌を撒いたのは貴方ね
この場所を忘れたりはしないわ

見つけるな扉を よろめいた小鳥
閉めてくれ扉を 手のひらの小鳥

このロープは 誰のもの?
痕跡を消せるなんて夢噺
罪をいつも見ているよ空から
嘘はもうダメだからね

こんにちは可愛い小鳥 破滅の道へ
お別れよ可愛い小鳥 命果てる時は

無感動に鳴いてね いつものように
好きになれたものもあったの
自然の中に 一つになれたらよかった
人間なんて愚かなだけよ

密やかに産まれた小鳥 わたしは消えて
旅立ちを愛せよ小鳥 若葉は芽生えた

もうすぐ次の季節が来る